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私が、生まれて初めて火葬場に行った時のことを
思いだします。21歳の時、牧師の見習いとして、九州
の教会に赴任した時のことでした。教会員の方が亡
くなられ、お葬式が行われました。その式の後、私は
遺族の方々と一緒に、火葬場に行きました。
お棺が焼却炉の中へ納められて数時間後、係の
人の連絡で、遺族の者が焼却炉の前に並びました。
扉が開けられ、トロッコが引き出されてくると、ムーッ
とする熱気、魚の焦げたような臭いが立ち込めます。
トロッコの上を見ると、そこにはカサカサに乾いたカ
ンナクズのようなものがパラパラと散らばっているだ
けでした。それを見た時は、ほんとうにショックでし
た。ほんの数日前までは、生きて、泣いたり、笑った
りしていた人が、今はもう、何の意味も持たない小さ
なカケラに変わり果てているのですから。人間はみ
なこうなってしまうのか。そう思うと、何とも言えない
むなしさがこみあげてきました。自分の愛する者も、
そして自分自身さえも、いつかはこうなってしまうの
だとすれば、生きることにどんな意味があるのだろ
54 愛は日本を救う
思いだします。21歳の時、牧師の見習いとして、九州
の教会に赴任した時のことでした。教会員の方が亡
くなられ、お葬式が行われました。その式の後、私は
遺族の方々と一緒に、火葬場に行きました。
お棺が焼却炉の中へ納められて数時間後、係の
人の連絡で、遺族の者が焼却炉の前に並びました。
扉が開けられ、トロッコが引き出されてくると、ムーッ
とする熱気、魚の焦げたような臭いが立ち込めます。
トロッコの上を見ると、そこにはカサカサに乾いたカ
ンナクズのようなものがパラパラと散らばっているだ
けでした。それを見た時は、ほんとうにショックでし
た。ほんの数日前までは、生きて、泣いたり、笑った
りしていた人が、今はもう、何の意味も持たない小さ
なカケラに変わり果てているのですから。人間はみ
なこうなってしまうのか。そう思うと、何とも言えない
むなしさがこみあげてきました。自分の愛する者も、
そして自分自身さえも、いつかはこうなってしまうの
だとすれば、生きることにどんな意味があるのだろ
54 愛は日本を救う