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場へ泳ぎに行きました。その日は海水浴客が多く、
私たちは防波堤の外で泳ぎ出したのです。高い波を
越えて、どんどん沖へ泳いで行き、だいぶたってか
ら、岸へ引き返そうとして、向きを変えて泳ぎだしま
した。ところが、いくら泳いでも岸へ近づかないので
す。今度こそと思って力いっぱい泳いでも、岸に着く
ことができません。私は、前に聞いたことのある、引
き潮に引かれて、どんどん沖へ流されてしまうのでは
ないかと思ってゾッとしました。幸いひとりの高校生
が浮き輪を持っていましたので、それにみんなでつ
かまり、必死に岸をめざして泳ぎ続けました。けれど
も、どんなに頑張っても岸に近づきません。そのうち
に、体は疲れてくる、波は高くなって頭の上からたた
きつけてくる、そして、鼻といわず口と言わず塩水が
ドッと入ってきました。苦しくなって、もうここで死ぬ
のか、と思いました。その時、「まだ死にたくない。こ
のままでは天国に行けない。まだいろんなことを精
算していない」という気持ちが起きてきました。自分
の今までのことを考えると、死んでも死にきれないと

60 愛は日本を救う
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