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家族を捨てる

「どうしてこんなことになったんだろう？」。新宿発
岡山行きの夜行バスの中で、私は、今までの自分を
思い出していました。私は１９歳でキリスト教信仰
を持ち、翌年から神学校で学び、卒業後は牧師とし
ていくつかの教会で働き、また、請われて教団の出
版所の副編集長として、日本の各界の著名な方々と
のインタビューを行い、それなりの実績をあげてき
たはずなのに、今は、家族を捨て、少しばかりの着替
えと身の回りのものをバッグに詰めて、熊本の実家
へ帰ろうとしているのです。財布の中には３万円ほ
どの現金があるだけで、それで岡山から熊本までの
切符を買えば、残りはほんのわずか、明日のあても
ない生活しか待っていません。

「どうしてこんなことになったのか」。もちろん原因
ははっきりしていました。

知識としてキリスト教信仰のいろいろなことを知
っていても、またそれを口で語っていても、自分の
心の中は、キリストを知る前と、本質的には何も変

14 一条の光