Page 52 - Yamamoto Family -text final
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しょう。今でも申し訳なく涙が止まらなくなります。し
かし、私は、何のためらいもなく、そういうことをする
悪鬼のような人間でした。追い返してせいせいして
いた私でしたが、しかし、久しぶりに見た母の髪の毛
が、真っ白に変わり、老眼をかけた姿は、私の良心に
微かな痛みをもたらしました。きっと、あのように変
わり果てたのは、自分のせいに違いない。わずかに
私の心がちくりとしたのでした。
人生の帰路
自衛隊に入隊してからの私は、すっかりうつ状態
から抜け出し、ハイパーレスキューを目指していま
したので、人の何倍もの訓練をこなし、部隊の中で
も、常に上位の成績となり、次第に戦友たちからも
一目置かれるようになっていきました。上官にも気
に入られ、期待されるようになりました。全てにおい
て、恵まれていましたので、自分は、この道で生きて
いこうと考えるようになりました。しかし、今まで経験
したことのないほど、順調に人生が動き始めれば始
52 一条の光
かし、私は、何のためらいもなく、そういうことをする
悪鬼のような人間でした。追い返してせいせいして
いた私でしたが、しかし、久しぶりに見た母の髪の毛
が、真っ白に変わり、老眼をかけた姿は、私の良心に
微かな痛みをもたらしました。きっと、あのように変
わり果てたのは、自分のせいに違いない。わずかに
私の心がちくりとしたのでした。
人生の帰路
自衛隊に入隊してからの私は、すっかりうつ状態
から抜け出し、ハイパーレスキューを目指していま
したので、人の何倍もの訓練をこなし、部隊の中で
も、常に上位の成績となり、次第に戦友たちからも
一目置かれるようになっていきました。上官にも気
に入られ、期待されるようになりました。全てにおい
て、恵まれていましたので、自分は、この道で生きて
いこうと考えるようになりました。しかし、今まで経験
したことのないほど、順調に人生が動き始めれば始
52 一条の光