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ても、たとえぶん殴られたとしても、自業自得だと言
われたとしても、全て自分が間違ってきたことを謝
ろうと思いました。ただ、なんと言っていいかわから
ず、またなんと説明していいかわかりませんでした。

必死になって、何を言えばいいか、考えているう
ちに、聞き覚えのある駅の名前が聞こえてきました。
ふと窓を見ると、見覚えのある家が目に映りました。
いつも歩いていた道、懐かしいお店を通り過ぎてい
きました。ただ、なんと言いだせばいいかわからず、
言葉を与えてくださいと、ひたすら祈り続けていまし
た。すると、目の前に、あの日背を向けた我が家が見
えてきました。もう決して後戻りはしないと決めてい
ましたが、それでも心が重く、一歩進んでは、立ち止
まり、また一歩進んでは立ち止まっていました。そし
て玄関の前に立ちました。心で必死に神様に助けを
叫びながら、震える手でインターホンを押しました。

幸いにもまだ、家には誰もおらず、いつも鍵を置
いてある場所から、鍵を見つけて、部屋で、誰かの帰
りを待っていました。ほんの少しの物音で、ビクビク

56 一条の光
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