Page 62 - Yamamoto Family -text final
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ただ自分自身を確立していくために、距離を置く必
要があると考えたからです。振り返ってみると、本当
の意味での、親離れ、子離れのような経験だったの
かもしれません。都内で一人暮らしをしながら、将来
のことを考え、大学に通いたいと思いましたが、日々
の生活に負われる毎日で、思うように入学に必要な
学費をすら貯めることがでず、苦心していました。そ
れから、数年後、どうにもできず、仕方なく学費のこ
とを両親に相談しました。すると実家のすぐ近くの
大学に、家から通うなら、学費を援助してもいいと言
われました。あの母と一緒に住むのだけは嫌でした
が、自分の将来を思い、背に腹は代えられないと、頭
を下げることにしました。

こうして、別居していた父と母と私の3人で住み、
遅まきながらの大学生活が始まりました。中学、高
校 は 寮 生 活 をし、そしてそ の 後 ずっと両 親とは 一
緒に暮らしてこなかったので、朝、起きてきて両親に
「おはようございます!」という自分が、ぎこちなく不
自然だったのを今でも覚えています。基本的に私は

62 一条の光
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