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間に消え去り、私は言いつけを守らなかった結果の恐ろしさを目の
当たりにしました。私は、自責と後悔の念でいっぱいになり、倒れて
いるおばさんに向かって、「おばさん、すみません!ごめんなさい!」
と、何度も叫びましたが、結局どうしたらいいか分からなくなって、そ
の場から逃げ出してしまいました。自分の家の前にある庭まで走っ
て行き、藪の後に隠れていました。
しばらく隠れていたら、突然、「ドンドン」と玄関の戸を叩く音がし
ました。藪の間からのぞいてみると、玄関の所には、さっきのけがを
したおばさんと、一緒に遊んでいた友達がいました。彼らは、私の母
に向かって、「デイビッドが、このおばさんにけがをさせたんだよ。や
ったのはデイビットだよ」と口々に叫んでいました。私の母は、家の
中から救急箱を持って来て、その女性に傷薬をぬりました。私は、藪
の間に隠れてそれをずっと見ていました。父親から叱られることを
考えて、さらに恐怖心で一杯になっていました。母は、けがをした女
性を病院へ連れて行き、しばらくしてから戻ってきました。あとから
聞いた話では、その女性は額を5針も縫うことになり、母は治療費と
お詫びのお金を支払ったのだそうです。ところが、母は病院から帰っ
てからも、私を探しませんでした。そして、何事もなかったかのよう
に、家の用事をしていたのです。そのことはますます私を不安にしま
した。
それから時間がたって、日が暮れかかってきたころ、母は、私が隠
れていた藪の所へ来て、「デイビッド、おいで、夕ご飯だよ」と穏やか
に語りかけました。今まで母は、私がどこに隠れているのか、知って
いたのです。私は、恥ずかしさのあまり、ネズミの穴にでも入りたい
と思いました。私はうなだれて、黙って母の後について部屋に入りま
第4章 │ 73
当たりにしました。私は、自責と後悔の念でいっぱいになり、倒れて
いるおばさんに向かって、「おばさん、すみません!ごめんなさい!」
と、何度も叫びましたが、結局どうしたらいいか分からなくなって、そ
の場から逃げ出してしまいました。自分の家の前にある庭まで走っ
て行き、藪の後に隠れていました。
しばらく隠れていたら、突然、「ドンドン」と玄関の戸を叩く音がし
ました。藪の間からのぞいてみると、玄関の所には、さっきのけがを
したおばさんと、一緒に遊んでいた友達がいました。彼らは、私の母
に向かって、「デイビッドが、このおばさんにけがをさせたんだよ。や
ったのはデイビットだよ」と口々に叫んでいました。私の母は、家の
中から救急箱を持って来て、その女性に傷薬をぬりました。私は、藪
の間に隠れてそれをずっと見ていました。父親から叱られることを
考えて、さらに恐怖心で一杯になっていました。母は、けがをした女
性を病院へ連れて行き、しばらくしてから戻ってきました。あとから
聞いた話では、その女性は額を5針も縫うことになり、母は治療費と
お詫びのお金を支払ったのだそうです。ところが、母は病院から帰っ
てからも、私を探しませんでした。そして、何事もなかったかのよう
に、家の用事をしていたのです。そのことはますます私を不安にしま
した。
それから時間がたって、日が暮れかかってきたころ、母は、私が隠
れていた藪の所へ来て、「デイビッド、おいで、夕ご飯だよ」と穏やか
に語りかけました。今まで母は、私がどこに隠れているのか、知って
いたのです。私は、恥ずかしさのあまり、ネズミの穴にでも入りたい
と思いました。私はうなだれて、黙って母の後について部屋に入りま
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